高圧装置開発秘話

食品廃棄物処理装置は宇宙からの技術

2007.10.26
食品廃棄物処理装置

NHKで取り上げていただいた食品廃棄物処理装置、これが宇宙研究開発機構(JAXA)でも導入され、国際宇宙ステーションで利用される予定と報道されていたが、この装置の元となる処理技術は実はJAXAで生まれたもの。それが東洋高圧の高圧装置技術によって装置として具現化したものだ。

この処理技術は、元々は宇宙で人間が生きていくという目的で開発された。人間が宇宙ステーションで長く過ごすことになれば当然のことながら、食料、水、空気が必要となる。これらは宇宙空間では調達できないので、地球から打ち上げて供給するしかないが、この打ち上げコストは恐ろしい金額となり、その金額から換算すれば水一杯が数十万円という値段になってしまう。そこで考えたのが人間が使った結果出てくる排せつ物を循環させることである。

この研究に取り組んでいたのがJAXA総合技術研究本部宇宙先進技術研究グループ主任研究員の小口美津夫さん。小口さんは東洋高圧以外の会社とも共同で装置開発に取り組んでいた。しかし、高圧の世界は予期せぬことが次々と起こることから、なかなか思い通りに機能する装置が出来上がらなかった。このときJAXAの外部特許コーディネーターの仲介により小口さんと東洋高圧が結びついた。小口さんの研究室を訪れ、実験機を見た野口社長は、東洋高圧で培った高圧技術であれば、装置が実現できることを確信し、開発がスタートしたのである。

何度も打合せを重ね、試作機も製作した。決してすべての開発がスムーズに進んだわけではないが、これまで手がけた数々の超臨界装置や、「まるごとエキス」のような高圧装置、さらには2006年に手がけた鶏ふんなど家畜の排せつ物を高温高圧でガス化する処理のノウハウが活かされ、徐々に性能を高めていくことができた。現段階の装置では、焼酎の搾りかすをはじめとして、賞味期限の切れたジュースや牛乳など、液体状の食品廃棄物を水と二酸化炭素に分解して環境に害のない形へと変えることができる。二酸化炭素を排出するとはいえ、焼却処分した場合の20%の排出量にとどまっており、環境に与える負荷は非常に少なくなっている。

超臨界処理
高温・高圧にして、超臨界処理をしている様子。左から徐々に温度と圧力を高めており、気体と液体の境目がなくなっているのがわかる。超臨界状態になると、分子は非常に活性に動き、他の分子とぶつかり合うことで、食品残さも分解していく。

処理前と処理後の焼酎搾りかす
処理前(写真左)と処理後(写真右)の焼酎搾りかす。処理後は、純水に近い状態の水だけとなる。


NHKでも紹介されていたように、2007年4月から焼酎の搾りかすは海洋投棄できなくなった。さらに、ロンドン条約議定書へ日本政府が批准したことで、基本的に廃棄物の海洋投棄は禁止となる。食品廃棄物処理装置は、今後さらに性能向上につとめ、さまざまな廃棄物処理を解決する装置へと発展していきたい。

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