【試験装置ごとに担当者】
創業した当初は、企業を飛び込みで訪ねたりして試験装置の部品の注文をもらっていた。ところが、間もなく追い風が吹いてきた。日本が経済大国に向けて生産を拡大し始めると、米国は徐々に基礎研究データを日本に渡さなくなり、そのため日本企業は自ら基礎研究する必要性に迫られ、試験装置の需要が広がってきたのです。
本格的な装置の開発も手掛け始めました。三菱重工業広島研究所(広島市西区)から石炭をガス化、液化するプラントの試験装置を受注したのです。第一次石油ショックなどの影響もあり、実績ができると石油や石炭に関する試験装置の注文が三井化学や川崎重工業など大手メーカーから相次いだ。
ただ、第一線の研究者たちの要求を満たす試験装置を開発するのは簡単ではありません。注文通りに作っただけでは、彼らが必要とする性能を発揮できないことがあるからです。そのため、開発する試験装置ごとに担当者を決め、いつでも研究者のニーズに対応できる態勢を取ってきました。
海水の淡水化や燃料電池、鶏ふんのバイオマス処理…。30年以上の間に携わってきた技術の多くは、10~20年後の実用化や量産を見据えたもの。特許にかかわることも少なくなく、取引先の多くとは秘密保持契約を結んでいます。技術を通してみると、世の中の動きも分かるから面白いものです。
【高い判断力 受注に必要】
技術や人材面、金銭的にピンチを迎えたこともありました。しかし、同業他社が近くにあるわけでもなく頼る先はない。だから社員みんなで力を合わせて乗り越えた。日本の基礎研究の黎明(れいめい)期に創業し、こつこつと培ってきた技術や経験こそが今のわが社を支えているのです。
試験装置は受注しても、完成させられなければ意味がありません。受注のリスクは高く、いつも高い判断能力が求められます。私の中では、わが社の技術力を生かした量産品の開発も必要だ、という思いが、だんだんと膨らんでいました。