新聞・雑誌等への掲載

わが夢 東洋高圧社長 野口賢二郎氏 <1> 超臨界装置

2007.01.16
2007/01/16 中国新聞朝刊
超臨界装置
食や環境へ 新たな船出
 試験用プラントの開発・製造を手掛け、超臨界装置では国内トップシェアを誇る東洋高圧(広島市西区)。野口賢二郎社長(60)は大手メーカーや大学などのニーズに応じた最先端の装置などを提供し、先端技術の実用化に携わってきた。そして今、長年培ってきたオンリーワン技術を生かし、食や環境の新たな分野で事業化に乗り出そうとしている。


 超臨界は高温と高圧下で生じる、気体でも液体でもない物質の状態です。やかんに水を閉じこめて加熱し続け、温度と圧力が上昇していく状態を想像してみてください。やがて水と水蒸気の区別がつかなくなる。その状態です。
 超臨界では物質の分子は液体のように大きく、気体のように拡散性に富むので、他の物質に非常に溶け込みやすくなる。超臨界装置は水や二酸化炭素を溶媒にして特定の物質を分解したり、抽出したりできる。例えば、残留農薬の分析なら必要な時間が従来の一日から一時間程度に短縮可能。機能性食品の製造に必要な成分も高純度で取り出せます。

【カテーテル洗浄に挑む】
 わが社の超臨界装置の国内シェアは45%。けれど、メーカーや大学の研究者たちが求める装置の仕様はすべて違う。「一品一(仕)様」の世界だから、大企業には手が出せません。同業は国内でも2、3社で、関西以西ではわが社だけです。
 超臨界を使えば、今まで不可能だったことを可能にできる。それで3年前から取り組んでいるのが医療機器の洗浄です。血管などに挿入するカテーテルなどは非常に細く、管の内部の洗浄はとても難しい。高温に弱いため煮沸もできない。だから高価だけれども、使い捨てにされている。
 しかし、超臨界なら洗浄可能です。再利用できれば医療コストを下げられる。5~10年後の実用化を目指しています。
 半導体ウエハーのさらなる小型化に伴い、製造過程で必要になっている新たな洗浄方法や、廃食用油などからバイオディーゼル燃料を作り出す分野でも超臨界の応用を研究中です。
可能性 自ら見極めたい
 私たちが超臨界装置を最初に開発したのは約25年前でした。これが世界初だったと自負しています。環境や食に対する関心の高まりなどで需要はこの十年で伸びている。だからこそ可能性がどこまで広がるのかこの目で見極めたいのです。
 人がやっていないことを自分の手でやりたい、という思いはずっと変わりません。そんな私が最も影響を受けたのは、40年ほど前の渡米と世界各地の旅でした。

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