新聞・雑誌等への掲載

勝つ/東洋高圧(3)超臨界技術で未来開く-用途開拓へ実験棟新設

2006.04.06
2006/04/06 日刊工業新聞


【シェア45%超】
 東洋高圧躍進の原動力となった超臨界装置。超臨界はさまざまな物質に高圧・高温をかけて、液体でも固体でもない「超臨界流体」をつくる技術。同技術を使えばこれまで不可分とされてきたものが分解できる。東洋高圧が創業した70年代後半、大学では超臨界の研究が盛んで、研究室へ頻繁に出入りしていた社長の野口賢二郎は同技術に未来を感じていた。
 創業から数年たち、バルブなど機械部品の受注で顧客からの信頼を積み重ねていた。そんなある日「今度は装置をつくってみないか」といわれたのがきっかけで、超臨界装置を初受注した。以来、東洋高圧は超臨界技術と運命を共にすることになる。
 一品一様スタイルが受けた。研究者の「横のつながり」からか、営業活動をしなくても口コミで地元だけでなく全国の企業、大学、公設研究所から問い合わせと注文が舞い込むようになった。年間1台ペースの受注が2台になり、3台に増えた。現在は年間10~20台ペースで売れている。ニッチ市場であるものの、全国シェアは45%を超える。いつしか押しもおされぬ超臨界装置のトップメーカーになっていた。

【問題はコスト】
 超臨界装置だけでなく、東洋高圧が受け持つ仕事のほとんどは一品限り。顧客と秘密保持契約を交わし、開発を通じて得た特許も顧客に渡すことが多い。だが同じ仕事はほとんどないため、あまりダメージはない。蓄積した技術そのものが使えなくても、応用が他の仕事で生きた。
 超臨界技術が実用化される兆しが出始めたのは90年代に入ってから。環境ビジネスが注目を集め、不可分な廃棄物を分解する超臨界技術の実験が活発に行われた。処理が試された物質は下水、汚泥、ダイオキシン、廃プラスチック、半導体工場の廃液から有機性スラッジ、ペンキ、改質油、し尿など多岐にわたる。問題はコスト。そのまま捨てる方が安いため、実用化に至ったものは少ない。

【成分抽出に期待】
 環境よりも先に、大きなビジネスになりそうなのが抽出技術をもとにしたサプリメントビジネス。5年ほど前に始まった機能性食品、特定保健食品ブームで、超臨界技術による成分抽出が注目されるようになった。例えばノンカフェインコーヒーは超臨界状態の二酸化炭素を溶媒としてコーヒー豆の内部に入れ、カフェインを溶かし出す。この要領で機能性食品や化粧品向けの有効成分を抽出する。
 こんなエンドユーザーに近いビジネスモデルの将来性に反応した野口は05年、広島市西区の本社隣接地に実験棟を新設。子会社「超臨界技術研究所」を設立した。20年来取り組んだ超臨界技術の新たな未来を開く拠点の誕生である。

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