新聞・雑誌等への掲載

勝つ/東洋高圧(4)量産機・受託研究・サプリを柱に

2006.04.07
2006/04/07 日刊工業新聞


【24時間でエキス化】
 今年1月、東洋高圧は初の量産機となる超高圧装置を発売した。その名も「まるごとエキス」。生のイワシなどたんぱく質分解酵素を含む食材に圧力をかけて24時間でエキス化する。
 通常、天然食材由来の調味料は自然発酵により数年をかけて製造するものが多く、腐敗を防ぐため大量の食塩を使う。まるごとエキスは時間も食塩もかけずエキスを製造できる。発売以来すでに8台を受注。順調な滑り出しだ。
 サプリメント事業でも新たなビジネスが生まれている。超臨界装置の量産機器を自前でそろえるコストや研究する時間のない顧客向けに、特定成分の抽出研究と実験に加え、OEM(相手先ブランド)供給も始めた。中でも研究受託は食品や化粧品メーカーなどを中心に増えている。社長の野口賢二郎は「幅広い業種から問い合わせが舞い込んでいる」と期待をかける。
 サプリメントの自社販売にも乗り出す。個人向けにカスタマイズしたサプリメントを提供するサービスだ。根拠となるデータをそろえた信頼性の高さが売り。すでにホームページを立ち上げ、04年に「東洋サプリ」ブランドで試験販売を行っている。売上高はまだ年間1000万円程度だが、年末までに子会社を設立して本格展開する。

【課題は人材確保】
 事業の柱が順調に増えている今、課題は人材の確保。4月には4人(全社員29人)を採用したがまだ足りない。「当社の規模の小さいことが『いい大学を卒業させた』という思いのある家族にとってネックのようだ」と野口は嘆く。規模が小さいがゆえに一人ひとりが精鋭でなくてはならないのが悩みどころだ。
 もう一つの資金面の問題は徐々に解決しつつある。一品一様スタイルで先行投資型のビジネスモデルのため、資金調達が常に悩みだった。創業以来最大のピンチも、受注の不調ではなくバブル後に土地などの担保能力が半減した時に訪れた。量産機、受託研究、サプリメントビジネスなどの成長がもたらす安定収益は、経営基盤を固くしつつある。

【方針変えず】
 しかし野口は「どんなに業容拡大しても、東洋高圧は一品一様の装置作りを続ける」とこれまでの方針を変えるつもりはない。それが技術を蓄積し、競争力を高めることを痛感しているからだ。1000万円を下回る超臨界装置の量産タイプの開発にも取り組んでいるが、量産化したら生産は超臨界技術研究所に移管する計画。あくまで一品一様にこだわる。
 一品一様スタイルの研究開発での技術を量産型ビジネスに生かし、そこで得た資金を研究開発に回す。「このサイクルが確立すれば、東洋高圧はもっと強くなる」。野口はそう信じて、今日も受注と問い合わせの電話がかかってくるのを待つ。

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