新聞・雑誌等への掲載

わが日 わが夢 ものづくりを支えて <4>

2004.09.27
2004/09/27 中国新聞夕刊
受注から納入まで専従者
不具合への対応も即座
誠実な仕事と技術に自信


 近年、売り上げが伸びてきたのが企業の研究所や大学向けの超臨界装置。売上高約8億円のうち3億円以上を占めるまでになり、試験装置に続く柱に育った。超臨界装置を利用した新分野への進出も検討している。
 物質は固体、液体、気体に変化する。超臨界とは高温、高圧によってつくられる「第4の状態」で、水は374度、220気圧、二酸化炭素だと31度、75気圧ぐらいで超臨界になる。その特徴は、液体のように他の物質にすぐ溶け込むと同時に、気体のように拡散性も強い。
 超臨界水の場合、液体のような大きな分子のまま気体のように活発に動くため、どんな物質もよく溶かす。そのため従来は1日がかりだった食品などの残留農薬の分析が1時間で可能な装置ができるわけだ。
 超臨界装置は20年以上前から年に1台ずつ注文を受けてきた。5年ぐらい前から急に需要が増え、昨年は12台受注した。ただ、これも試験装置と同じく1台ごとに要求される仕様や性能が違うオーダーメードだ。
 超臨界装置がなぜ注目されるようになったかと言うと、環境や健康分野などでの活用が見込まれるからだ。超臨界水を使えば、ダイオキシンなど有害な化学物質を簡単に処理できる。低温で超臨界になる二酸化炭素を使えば、食品や花などから希望する特定の成分だけうまく取り出せる。既に健康食品業界では「超臨界抽出」などとPRした製品が出回っている。
 わが社も超臨界装置を使って特定の成分を抽出する新事業を手掛けている。秋田県横手市からは特産品のアスパラガスを出荷する際、大量に出る切れ端からアスパラギン酸を抽出する仕事を依頼されている。
 11月からは、電柱のトランスなどに使われ、国内に大量に保管されている有害なPCBを処理する装置を販売する予定だ。信州大の先生と共同開発し、先日学会で発表したらすごく反響があった。PCBの処理は法律で義務化され、市場規模も大きい。単に装置を売るだけでなく、処理量に応じて費用をいただく新ビジネスが展開できないか検討している。
 超臨界装置で国内トップになったが、その理由は部品をはじめすべてわが社で製造できる強みがあるからだ。他社は機械部分は造れても電気系統は外注。わが社なら、たとえ不具合が見つかってもすぐ対応できる違いがあり、それで全国から信頼を獲得できた。
 それと、試験装置も同じだが、受注案件ごとに特定の担当者を決め、装置を開発、製造、納入するまでの約半年、専従で当たらせている。だから責任を持った開発、製造体制が取れるし、担当者はその装置について詳しくなり、優秀な人材として育つ効果もある。
 こうした専従担当者は7人おり、装置の製造担当も7人だ。そのため年間に受注できる案件は限られるが、私はそれでも良いと考えている。規模拡大を追わなかったおかげでバブルの被害も受けず、創業から30年たった今も生き残れた。
 わが社のように試験装置づくりを専門にしている企業は世界でも米国、ドイツ、フランス、スイスにあるぐらい。いずれも世界的に技術力が高い国ばかりだ。わが社はこれからも世界最先端の技術力を持つ日本のものづくりを支えているという自負を胸に、誠実に仕事をこなしていきたい。

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