新聞・雑誌等への掲載

わが日 わが夢 ものづくりを支えて <1>

2004.08.30
2004/08/30 中国新聞夕刊
特注でミニプラント装置
依頼企業と秘密保持契約
研究者と技術者つなぐ役


 東洋高圧は、石油化学や繊維、食品、製鋼、製紙、原子力、新エネルギーなどさまざまなプラントの試験装置を製造するメーカー。特に、超臨界装置の国内シェアでは45%とトップである。資本金は1千万円、2003年8月期の売上高は8億2900万円。
 わが社は従業員26人の小さな会社だが、取引先は全国の大手メーカーの研究所や大学、公設試験研究機関に及んでいる。仕事の内容は、新製品を量産化したり、最先端の技術開発を支える試験装置を造ることだ。
 例えば、化学メーカーが新製品を開発し、それを量産化するプラントを建設しようとする際、机上で描いた設計図だけでいきなり大きな工場を建てるには無理がある。設計図通り建設しても果たしてうまく稼働するかどうか。数十億円、数百億円もかかる工場の建設でそんなリスクを負うことはできない。
 そこで、われわれが製作する試験装置の需要が生まれる。テストプラントは平たく言えば工場のミニチュアみたいなもの。プラントの一部の構造をサイズだけ縮めて製作し、実際にそれを動かして工程がスムーズに行くかどうか、本番に備えていろいろなデータを集めるために使う。
 もちろん、こうした装置は世界に一つしかないオーダーメードになる。仮に同じような製品を生産する試験装置を造るにしても、求められる仕様や性能は企業ごとに異なるし、各企業が保有している特許の関係から、一つとして同じ装置はない。創業以来、こうした試験装置を2500百台ぐらい造ってきた。
 具体的には、海水の淡水化や石炭の液化、ダイオキシンやPCBなど有害物質を処理する装置などを造った。最近では燃料電池や超電導、水素製造など最先端技術を使った装置が増えている。
 ほとんどが10年、20年後の実用化や量産化を目指すものばかりだから、わが社の工場を見れば未来にどんなものが登場するかだいたい分かる。当然のことだが、特許などさまざまな独自技術が関係するため、取引先の多くと秘密保持契約を結んでいる。そうした企業は現在、50社を超えている。
 注文は毎日、ファクスや電子メールでたくさん寄せられ、依頼を受け切れないほどの需要がある。なぜなら大手企業といえども、こうした試験装置は自前で製作するのはなかなか難しい。要員を常時抱えることはコスト的に難しいし、なにより企業や大学の研究者などにとって装置の仕様や性能などをその製造に携わる技術者に説明するのは苦手だからだ。
 化学プラントや最先端技術開発などでは高温や高圧、真空などの過酷な条件が必要なケースが多い。それを作り出すための釜やバルブなどをどんな材料でどう加工すればいいか、そういう点について研究者はあまり知識がないし、技術者にそれをうまく説明するすべも持たない。
 わが社の従業員なら、研究者から簡単な説明を受けるだけで装置に求められる仕様が理解できるし、それを実際の図面に落として製作できる。言わば研究者と技術者との間をつなぐ翻訳能力であり、そのノウハウを培ってきたからこそどんな試験装置も造れるわけだ。
 国内にはそれこそ何十万というメーカーがあるが、同業他社は国内でも3社しかない。しかも関西以西ではわが社があるだけだ。そんな企業を立ち上げてから、ちょうど30年になる。

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