新聞・雑誌等への掲載

会社ウオッチ 東洋高圧 実験装置製造に特化

1999.09.24
1999/09/24 中国新聞朝刊


本社工場で今、大手化学メーカーの研究所に納入する機器の組み立て作業が仕上げに入っている。新しい記録材料開発のために、素材のフィルムに塗る最適なチタンの粉末量を測定する装置だ。実験用のため、一品だけの生産。研究所の要望を繰り返し聞いて、設計図面を何度も引き直して、仕上げていく。
こうした企業の研究所や大学の実験装置の開発、製造を手掛ける西日本で唯一の専業メーカーである。「一点ずつの受注生産で、しかも実験用の小型装置のため、大手企業は乗り出さない。うちはニッチ(すき間)市場に特化していく」と野口賢二郎社長。
これまでに納入した製品は、触媒反応試験や高圧水素精製の装置、真空高温炉など、ざっと1500アイテム。取引先は三菱重工業、三井化学、三菱化学など大手工場を中心に50事業所に上る。
野口社長はかつて、大阪で、ガスノズルなど圧力機器のメーカーに勤務し、研究開発部門で働いていた。当時、化学メーカーの知人から特殊な減圧弁を付けた実験用プラントの製造を持ち掛けられたが、勤務先では、利益が出にくい単品生産の仕事は引き受けていなかった。そこで「専門の会社をつくれば、需要があるはず」と思い立ち、1974年4月に独立した。
一人だけのスタート。自分で設計し、製造は外注した。自社製造に踏み切ったのは76年4月、旋盤加工の技術者と設計士を採用してからだ。
バブル崩壊後、大手工場の研究開発費の削減で、受注の減少や実験装置の値下げ要請が強まったこともあり、食品製造機械に進出した。転機は93年2月。京都市に住む知人のカニ料理屋の経営者から「カニの殻を自動でむく機械がないものか」と相談され、「うちでつくりましょう」と応じた。初めての複数生産品で、料理店などに10台売れた。その後は、スーパー向けにサケの切り身を重さを同じで斜めに切る装置や製材所向けにヒノキの切りくずから抗菌作用のある精油を抽出する装置の開発など、分野が次々に拡大。開発型企業の道を進んでいる。

▽社長から一言 ニーズを丹念に追う 野口賢二郎氏(53)
毎回違うニーズを求められる実験装置の製造に特化したおかげで、さまざまの製造技術を蓄積できた。それぞれの実験内容は秘密保持契約を結び、公開しないが、ノウハウは応用できる。不況とはいえ、お客さんのニーズを丹念に追っていけば、受注は必ずある。

←戻る


東洋高圧バナー  超臨界技術研究所バナー